民法94条2項

1.判例は、文言通り善意のみを要件としている。

2.通説も同様である。

3.無過失を要求しない理由は、当事者が意図的に虚偽表示をしている
 のに、第三者が保護されるために虚偽表示の有無についての調査義務
 を課されるのは妥当ではないというものである。

4.無過失要求説の主張は、第三者が保護されるには、そのような
 しかるべき外観に対する信頼が必要であり、信頼に値する外観が
 作出される前に単に意思表示が虚偽であることを知らないだけでは
 保護に値しないと主張しているに過ぎず、不要説と差はないという。

5.類推適用の要件
  94条2項の類推適用は取引の安全を図る機能を果たすが、94条2項
 の本来の趣旨からいえば、あくまで権利者本人に、虚偽の外観を作出し
 たに等しい落ち度が必要だということである。

6.偽りの登記などを単に消極的に放置していたというだけでは不十分で、
 積極的に承認したといえる程度の関与を必要とする。

7.判例は、真実の権利者の意思と第三者の信頼の基礎となった外形と
 が対応する場合(意思外形対応型)と、両者が対応を欠く場合、すなわち
 外形が意思を逸脱する場合(非対応型)を分けて考えている。

8.非対応型
  判例は、かような場合に関しては、「94条2項・110条の法意に照らし、
 外観尊重および取引保護の要請に応ずるゆえん」であることを根拠
 として、善意無過失のCないしDを保護しようとするのである。

9.非対応型では、中間者の背信行為によって作出された外形が権利者
 の承認を与えた外形とのあいだに適当な関連を有するものであること
 に、権利者の帰責事由を認めることはできるけれども、ともかく
 第三者の信頼した外形が権利者の意思を逸脱しているところから、
 第三者の過失の有無をも考慮に入れることによって多少権利者の利益
 をはかる必要があるというわけである。