1 民執30条1項は、「請求が確定期限の到来に係る場合においては、強制執行
は、その期限の到来後に限り、開始することができる。」と定めています。
2 実務も、扶養義務等債権を請求債権として、期限の到来した定期金債権に
基づいて、数か月ごとに繰り返し強制執行を申し立てる事案も少なくありません
でした。
3 そこで、扶養義務等債権を有する債権者の手続的負担を軽減するため、平成
15年改正により、未だ期限が到来していない分の定期金債権部分についても
一括して、給料その他継続的給付に係る債権に対する強制執行を開始することが
できることとし(民執151条の2)、将来分の定期金債権に基づく差押えを可能
とする特例が設けられました。
4 そうすると、
① 当初差押申立てに係る部分が、破産により無効となり、破産開始後
申立て分の前提がなくなったので、破産開始後の申立てはなくなった
として、それも破産により取消、再度の申立てとなるのか?
② 当初申立てにより、破産開始後分の申立ても既にあったものとして、
開始後は取消できないのか?
どちらでも考えられます。
5 民執152条1項は、4分の3に相当する部分とし、一律に差押禁止とする範囲
を定めています。その上で、債務者及び債権者の具体的な状況を考慮する必要
がある場合は、当事者の申立て及び立証により、差押禁止債権の範囲の拡張
又は減縮ができるものとしています(民執153条)。
6 平成15年改正により、法律上一律に差押禁止とする範囲がその給付の「4分
の3」に相当する部分から「2分の1」に相当する部分に減縮されました。
これは、請求債権が扶養義務等債権である場合には、標準的な世帯の必要
生計費には、扶養等を受けるべき者の必要生計費も含まれているはずである
から、扶養義務等債権の性質上、民執152条において差押えが禁止されている
範囲をも対象として実現されるべきものと考えられます。