1 抵当権者が物上代位権を行使して賃料債権の差押えをした後は,抵当不動産の
賃借人は,抵当権設定登記の後に賃貸人に対して取得した債権を自働債権とす
る賃料債権との相殺をもって,抵当権者に対抗することはできない。
[平13・3・13第三小法廷判決](判タ1058-89)
2 物上代位権の行使としての差押えのされる前においては,賃借人のする相殺は
何ら制限されるものではないが,上記の差押えがされた後においては,抵当権
の効力が物上代位の目的となった賃料債権にも及ぶところ,物上代位により抵
当権の効力が賃料債権に及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみ
ることができるから,抵当権設定登記の後に取得した賃貸人に対する債権と物
上代位の目的となった賃料債権とを相殺することに対する賃借人の期待を物上
代位権の行使により賃料債権に及んでいる抵当権の効力に優先させる理由はな
いというべきであるからである。