遺産分割協議後に発見された遺産の分割において、先行した遺産分割を考慮するか(消極)(大阪高決令和元年7月17日判タ1475号79頁)

1 平成11年に被相続人Cが死亡し、相続が開始した。相続人は、妻である亡D、子である抗告人A及び相手方Bの3人であった。

 平成13年に亡Dも死亡し、平成14年に亡Dの相続人であるAとBとの間で、遺産分割協議が成立した。ところが、平成16年頃にC名義の預金口座(残高合計1300万円余り。)が発見された。

2 一部分割後の残余財産の遺産分割の方法については、残余財産のみを法定相続分に従って分割することで足りるか、一部分割における不均衡を残余財産の分配において修正し、遺産全部について法定相続分に従った分割をすべきかが問題となる。

3 残余財産についての遺産分割の方法は、先行協議の意思解釈によって定まるべきであり、多くの場合、関係者は一部分割と残余財産の分割とを独立させ、それぞれ個別的に決着をつける意思であろうし、そのように解するのが紛争の蒸し返しを避けるためにも相当ではないかという指摘もある。

4 相互に代償金の支払を定めることもなく遺産分割協議が成立していることが認められることからすると、先行協議の当事者は、各相続人の取得する遺産の価額に差異があったとしても、そのことを是認していたものというべきである。そうすると、先行協議の際に判明していた遺産の範囲においては、遺産分割として完結しており、その後の清算は予定されていなかったというべきである。