1 傾斜地等においては、格別の人為が加えられなくても、土砂の崩落
が起こる場合が少なくない。
2 一般的な物権的請求権の観念からすれば、このような場合、下方
の土地の所有者、占有者は上方の土地の所有者に対しその費用負担に
おいて妨害予防請求等をなしうることになるが、その結果は上方の
土地の所有者に酷な場合が少なくないであろう。
3 危険が相隣地の関係にある場合に、それが土地崩落を内容とする
ものであり、しかも隣地土地所有者の人為的作為に基づくものでない
ときには、前記の請求をなし得ないものと解するのが相当である。
4 相隣地の関係にある場合は、右のような危険は相隣地両地に共通に
同時に発生する特性を有するものであり、右予防措置を講ずることは
相隣地両地にとって等しくその必要性があり利益になるものといえる
うえ、これを実施するには多大の費用を要することが一般であるから
このような場合において、一方の土地の所有者又は占有者にかかる
請求権を認めることは著しく衡平に反するものといわねばならないか
らである。
5 土地相隣関係の立場から民法223条、226条、229条、232条の規定を
類推し、相隣地所有者が共同の費用をもって右予防措置を講ずべき
である(東高判S58.3.17、判タ497-117)。