遺産分割審判に対する即時抗告

1 【不利益変更禁止について(民訴304条の下準用】
民事訴訟法304条は、第一審判決の取消し及び変更は、不服申立ての限度に
おいてのみ、これをすることができると規定していることから、これにより、
控訴審の範囲が限定され、不利益変更の禁止が要請される。
しかし、「家事審判手続においては、審理及び判断の対象が申立ての内容に
厳格に拘束されるわけではなく、公益的、後見的な見地から適切な裁量権を行使し、
あるべき法律関係を形成することが求められており、処分権主義が貫かれているわ
けではない。また、家事事件の場合は何をもって不利益というかが事案によって
必ずしも明らかではない」(「一門一答」148頁参照)
そこで、家事事件手続法は、不利益変更禁止の原則を規定していない。


2 【附帯抗告(民訴293条)の不準用】
附帯抗告とは、抗告の相手方が抗告の裁判を自己に有利に変えるため、
抗告人のした抗告手続に附帯してする申立てである。
民事訴訟事件の抗告審に係る附帯抗告においては、附帯控訴に関する
規定が準用される(民訴331条、293条1項、民訴規205条、178条)
しかし、家事審判事件においては、附帯控訴(民訴293条)を準用して
いない(家事法93条3項)


3 【審理の方式】
抗告審は事実審であり、原審の続審であることから、原審記録に顕れた事実
及び証拠は当然に抗告審に引き継がれるとともに、当事者は、抗告審において
も新たな事実主張や証拠を提出することができ、また、抗告審も審問や陳述の
聴取を行う。