1.死亡退職金はその受給権者の範囲と順序が、法律により、あるいは労働協約・
就業規則により定められており、相続人に関する民法の規定とは一致しないこと
が多い。
2.退職金の本質
(1) 功労報償説
(2) 社会保障説
(3) 賃金後払説
3.私企業の退職金
(1) 労働基準法施行規則42条ないし45条の規定を準用する旨の定め
(2) 使用者が適当と認める遺族に支給すると定めるもの
(3) 相続人に支払うもの
(4) 受給権者に関する定めをまったくおかないもの
4.相続法の規定と異なる遺族補償規定の準用を定める受給規定を、相続法との
関連においてどのように解すべきであろうか。
(1) 受給権者固有の権利であって相続財産とはならないと解する説
(最判昭55.11.27)
(2) 遺族に支給すると定める内部規定がある場合
最高裁は、受給権者たる遺族固有の権利であるとした。
(3) 相続人に支給すると定める内部支給規定がある場合 → 争いあり
(4) 受給権者が法人の内部支給規定で定まっていない場合
下級審の裁判例では、相続財産に含まれるとする例が多かった。
最高裁は、死亡退職金の支給規定のない財団法人の理事会が、死亡した
理事長の配偶者に対し、理事会の決議によって退職金を支給した事案につ
き、配偶者は相続人の代表者としてではなく、個人の権利として受給した
ものであるとした。
5.判例は、死亡退職金を受給権者の固有の権利であるとする範囲を拡大し
つつある。