加重障害と損害額の算定

1.赤本 H18年・下巻 129頁以下。2.逸失利益 (1)逸失利益の算定で着目されるのは以下3点 A 基礎収入の捉え方 B 労働能力喪失率の捉え方 C 素因減額と同様の考え方により、減額をする場合があるか ※裁判例は必ずしも、一定の考え方によっていない…

相続財産管理人事件の移送

1.移送の上申 家事審判法の下では、相続財産管理人選任後の監督、その後の裁判手続等を考慮して、事件を他の家庭裁判所に移送を求める上申がされた2.移送を求める事由 ア 相続財産(特に不動産)が移送先の家庭裁判所の管轄地に所在する場合 イ 申立人の…

建築紛争における専門家調停の活用(判タ1381号57頁)

1.大阪地裁建築・調停部では、a 建築関係事件の専門部として、付調停や専門委員制度を活用して、充実した審理のもとで迅速な紛争解決にあたっていくこと、b 調停部として、複雑困難化する専門的知見を要する付調停事件について、専門的知見や法的観点に裏…

投資信託受益権(MRF等)と個人向け国債の相続

H26・2・25第三小法廷判決 判タ1401号153頁1(判旨) (1)共同相続された委託者指図型投資信託の受益権は、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはない。 (2)共同相続された個人向け国債は、相続開始と同時に当然に相続分…

吐物の誤嚥と外来の事故

1.(判旨)吐物の誤嚥は、傷害保険普通保険約款において保険金の支払い事由として定められた「外来の事故」に該当する(平成25.4.16第三小法廷判決 判タ1400-106)。2.本件は、Aが吐物を誤嚥して窒息し、死亡したことについて、死亡保険金の支払いを求…

権能なき社団の代表者個人名義への所有権移転登記手続請求事件の原告適格

1.権利能力のない社団は、構成員全員に総有的に帰属する不動産について、その所有権の登記名義人に対し、当該社団の代表者の個人名義に所有権移転登記手続をすることを求める訴訟の原告適格を有する(最一小判平成22年2月27日判タ1399-84)2.本件は、権…

所有権の更正の登記

1.権利の更正の登記は、既にされた権利に関する登記について、 ア「当初」の登記手続に錯誤又は遺漏があるため、 イ その一部に登記と実体関係との間に「原始的」な不一致がある場合において、これを訂正補充する目的でされる登記であり、 ウ この更正の登…

遺産共有持分と他の共有持分との解消方法(最二小判平成25年11月29日判タ1396号150頁)

1.共有物について、遺産共有持分と他の共有持分とが併存する場合、共有者が遺産共有持分と他の共有持分との間の共有関係の解消を求める方法として裁判上採るべき手続は、民法258条に基づく共有物分割訴訟であり、共有物分割の判決によって遺産共有持分…

担保の取戻(民事保全規則17条)

1.民事保全規則17条4項5項 (1)保全命令発令後に、債務者が債権者に対して債務名義を得た場合(反訴の勝訴)等には、債務者が債権者(担保提供者)の担保取戻請求権を承継して、保全命令を発令した裁判所に対し担保取戻の許可を申立てることができる…

共有者への相続財産持分全部移転(民法255条と民法958条の3)

1.相続人不存在かつ特別縁故者不存在の場合になされる、共有者への相続財産持分全部移転登記手続は、相続財産法人を登記義務者、共有者を登記権利者とする共同申請による。2.登記義務者の同一性を示すものとして、被相続人の共有持分取得の登記に関する…

相続登記と戸籍と判決

1.登記義務者の相続人が、登記申請人となる場合、相続証明情報の添付が必要である(不動産登記法62 条、不動産登記令7条1項5号イ)。 この相続証明情報は、申請人が登記事務者の相続人であって、かつ動産登記法62条、不動産登記令7条1 項5号イ)。申請人以…

「まかせる」遺言の効力

1.「相続を全てまかせる」旨の遺言について、包括遺贈する趣旨のものであると解された事例(大阪高裁平成25年9月5日判決・判時2204号34頁)2.訴外Aは、「私が亡くなったら財産については、私の世話をしてくれたXに全てまかせますよろしくお願…

転付命令が発せられた場合の供託

1.民事執行法は、転付命令に対して執行抗告を認め(民執159条4項)、転付命令は確定しなければ、効力を生じないこととしている(民執159条5項)。2.転付命令の確定前に、第三債務者は民執法156条1項によって、差押えの対象となった金銭債権の全額又は差…

別除権付債権

1.担保権があっても被担保債権の債務者が破産者でなければ、当該債権は別除権付債権にならない。2.Bが貸金債務を負い、破産者AがBの債務について保証し、自分の保証債務を被担保債務として自己所有不動産に抵当権を設定している場合、Aに対する保証…

成年後見人の調査人

1.家事事件手続法124条 (1)家庭裁判所は、適当な者に、成年後見の事務若しくは成年被後見人の財産の状況を調査させ、又は臨時に財産の管理をさせることができる。 (2)家庭裁判所は、前項の規定により調査又は管理をした者に対し、成年後見人の財…

賃借人への目的物への譲渡と賃料差押(判タ1384‐122)(最判H24.9.4)

1 本件は、賃料債権の差押え後に、差押債務者(賃貸人)が賃貸目的物を第三債務者(賃借人)に譲渡したため、譲渡後も賃料債権が発生し、取立が可能かが問題となった事案。2 原審は、賃料債権は第三者の権利の目的となっているから、民法520条ただし書によ…

民法642条と破産法53条の関係(判タ1394-366)(東京地裁24.3.1)

1 本件は、請負契約における注文者の破産において、請負人が、瑕疵担保義務 もしくはその前提となる検査受検義務等が未履行であるとして、請負代金請求 権が財団債権になる(破53Ⅰ、148Ⅰ⑦)と主張した事例。2 民法642条の趣旨は、請負人は仕事が完成して初…

供託金の支払(取戻・還付)

1.賃料の増減額の事件の和解で、供託金の還付がされていない場合において、 一方当事者が供託金の払渡しを受ける合意がされる場合がある。2.供託は、被供託者が受諾の意思表示をするまでは、実体法上供託者・被供託者双方に、 供託金の払渡請求権(取戻…

取得税再更正処分等取消請求事件(価額弁償と遺贈の時期)

1 本件土地の遺贈に対する遺留分減殺請求について、受遺者が価額による 弁償を行ったことにより、結局、本件土地が遺贈により、相続人から受遺者 に譲渡されたという事実には何ら変動がないこととなる。 (最判平4.11.16 判タ803号61頁)2 裁判官大堀誠一…

使用借権の時効取得(判タ1393-170)(東京高判25.9.27)

1 親族間においては、土地の使用貸借をめぐる紛争が多く、その中には、 土地の使用借権の時効取得が争点をなった事件も相当数ある。 2 最二小判昭48.4.13は、土地についても使用借権の時効取得が成立し 得ること自体は、認めている。 3 上記最高裁判決に…

果実収取権(遺贈)

1 特定遺贈の受遺者は、遺贈の履行を請求することができる時から果実を 取得する(民992条本文)。2 「遺贈の履行を請求することができる時」とは、通常の遺贈においては 遺言者死亡の時、停止条件付遺贈においては条件成就の時、始期付遺贈 においては期…

相続開始後の相続財産(不動産)の管理・使用に関する相続人間の訴訟 (判タ1390、1392、1393)

【1390】 第2 相続開始後の相続財産(不動産)の使用(占有)に関する相続人間の訴訟をめぐる問題2 訴訟物と問題の所在について 3 明渡請求[論点1]に関する検討 4 不当利得返還請求及び不法行為に基づく損害賠償請求[論点2] に関する検討 (1)裁判例…

民事調停(参加)

1 利害関係人参加申立書 頭書事件について、利害関係人は、相手方の債権者として、 この調停の結果について重大な影響を受けるので、利害関係人 として本調停に参加したく申立てをします。 2 参加を申し出ることができるのは、調停の結果について 法律上の…

第三債務者の供託費用

1 第三債務者が供託金から支払いを受けることができる供託費用(義務 供託のために要した費用)の種目と金額の例としては、 1.供託書の書記料150円 2.事情届の書記料150円 3.供託金の提出費用500円 4.供託書正本の交付を受けるために要する費用500円 5.事情…

遺産分割管理費用の清算の問題

1 遺産管理費用 固定資産税などの公租公課、遺産が賃借権であるときの賃料(地代)、 家屋の修理費・改築費、土地改良費、火災保険料の支払、遺産の賃借 人に対する立退料。 2 見解 ア 積極説 イ 消極説 共同相続人が相続分に応じて負担すべきであり、管理…

車両損害 (判タ 1392-20)

第2 車両損害についての概観 1 人的損害と物的損害の区別について 2 訴訟における位置付け (1)訴訟物 (2)自動車損害賠償保障法の適用の有無 3 車両損害の算定についての考え方 (1)物理的全損と経済的全損 (2)事故当時の価格と売却代金の差額を請求し得る…

調停に代わる審判

1 家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、 当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、 事件の解決のため必要な審判をすることができる。 これを「調停に代わる審判」という(家事法284条1項)。 2 家事事…

自庁調停(自庁処理)

1 家事審判事件が係属している家庭裁判所が、当該事件を 家事調停に付する場合には、当該裁判所が当該家事調停 事件の管轄権を有するかどうかを問わず、みずから 処理することができる(家事法274条3項)。

否認権の実務(403)

1 総論 否認の類型現行法を中心に〜 1 債権者全体を害する…詐害行為 2 債権者平等に反する…偏頗行為 2 詐害行為否認 (1) 支配不能後の在庫等の処分 1 集合物譲渡担保…特定性の要件 2 倉庫の賃料との兼ねあい 3 動産先取特権 (2) 財産分与 1 詐害行為の最判…

赤本 2009年 下 41頁

1 死亡逸失利益から生活控除を行うことは、男女間の収入格差、損害賠償額 の高額化等の解決、あるいは個別事案における遺族の生活保障の観点など から求められる損害賠償額算定における調整機能を果たしている。2 家族である被扶養者の存在は、男性にとっ…